世界にも目を向けて、好きなことをどんどんやる。―東京大学 葛岡教授に聞く学びで大切にしたいこと
2021.04.30




東京大学大学院 情報理工学系研究科 葛岡英明教授




概要

コロナ禍により世界規模で遠隔コミュニケーションの必要性が高まっています。今回は遠隔対話システムやソーシャルロボットなどの研究をされている東京大学情報理工学系研究科の葛岡先生に遠隔コミュニケーションで考えなければいけないことや、教授として学生に指導をするうえで大事にしていることなどのお話を伺いしました。

 

 

いまどのような研究をされていらっしゃるんですか?


葛岡教授: 遠隔コミュニケーションを支援するとかソーシャルロボットで人とロボットの円滑なコミュニケーションができるようにするとか、そういう研究をしています。遠隔コミュニケーションだと、相手の空間にある紙の資料を指差そうとしても、この指差しが伝わらない場合があったり相手がどこを見ているのか分からなかったりなどの問題が発生することがあるんです。それをどのように解決しようかという研究をしてきました。研究を進めていくうちに人とロボットのコミュニケーションってどうなんだろう、ロボットにどういう機能があったらいいんだろうとか、そういうことにも興味が出てきて、ロボットを作っていろんな動作をさせたときに、それをヒトがどういうふうに認識するのかというようなことも研究しています。

出典:東京大学 葛岡教授

 

いままさに必要な研究ですね


葛岡教授: そうですね、今必要な技術だと思います。2年前に東大の研究室に戻ってきて、こちらでは主にバーチャルリアリティーの研究をしています。当然バーチャルリアリティーも遠隔コミュニケーションを支援するには最適のツールですので、今度はそういう技術を使ってみようと今いろいろと学生たちとやっています。特にバーチャルリアリティーだと、今度は現実に縛られる必要がないということがありますので、バーチャルリアリティーならではの技術を使って、できるだけ現実以上のコミュニケーションというのができないかということで、研究を進めているところです。

いまの研究に興味を持ったキッカケはありますか?
 

葛岡教授: 修士1年のときに、アメリカに留学をしたんです。そのときにアメリカと日本とで連絡を取り合わなくちゃいけないということがありました。その頃はようやくインターネットのはしりのようなネットワークができてきて、テキストでリアルタイムの会話ができるようになったんです。それである日、大学のオンラインのシステムに座っていたら、日本の知人から「こんにちは」というメッセージが来て、「うわ、何だ」とびっくりして。リアルタイムで会話ができるということが分かって、「こういう通信の仕組みを使って、情報のやりとりができるようにしよう」というようなことを考え始めました。

研究でやりがいを感じるときや大変なときはありますか?


葛岡教授: 大変なのは新しいことを考えなくちゃいけないという、新規性を常に求められることです。何かをやるにしても「これ面白そうだな」とやるだけでは学問にならないので、どういう意味で学術的に意義があるのかということをちゃんと説明して論文にしたり発表したりするというのは非常に悩ましいところです。だけど、何か発想して面白いものができたときとか、それがちゃんと論文として評価されたときというのは、やはりやりがいを感じます

先生はどんな子供だったんですか?


葛岡教授: 父が技術家庭科の教員で、家にいっぱい電子部品だとか、ちょっとした動く機構……馬がパカパカと脚を動かすような、そういうおもちゃみたいなものを技術家庭科用に作ってあったんです。そういうのを小さいときから見ていて、「こういう動くものは面白いな」と。ラジオの工作キットとかも貰っていたので、そういうのを作ってみて「作って動くというのはすごく面白い」というふうに思っていました。小学校低学年から何か作るということは結構やっていましたので、当然プラモデルもいっぱい買って作ったりして。そういう工作が好きで、やらせてもらっていたという感じです。だから、「とにかく何か動くものをやりたい、コンピューターでプログラムだけで済むものよりは、それで何か動くものをしたい」というのがありました。コンピューターというものがあるんだと知ったときに「じゃあコンピューターで動くものを制御したい」というふうに思ったという感じです。

東京大学はどのような雰囲気の大学ですか?


葛岡教授: 学生はみんな割と真面目なんですけど、勉強ばかりしてるかというと工学部だとそうでもなくて何かいろいろ遊んでます。遊んでるんだけど、いざ「ちょっと勉強しなさい」って言うと一気に……急にというか、真面目にそういうのもできて結構メリハリがきいてるなというふうに思います。教員の方は、やはりみなさんすごくて、遊びもそれなりにすごいんですよね。釣りをやったりとか、スポーツをいっぱいやったりという人もいます。だけど、研究とか学術的なところになると、「どの時間にそれをやってるんですか」というぐらいいろんなことを知っていて、かなり賢い。いろいろ真剣に議論できるような人たちがいるということで、仕事や研究と、遊びというのでメリハリがはっきりしていて、どっちもやる人が多いという印象ですね。

出典:東京大学 葛岡教授

 

遊びの中からも何か学びというか、インスピレーションみたいなものがわいてくるということもあるんでしょうか?


葛岡教授: そうですね、そんな感じに見えます。それで学んだことが研究に活かされることが多いように見えます。

先生がワシントン大学に行かれて、日本の教育とアメリカの教育の違いで感じたことは何かありますか?


葛岡教授: 最近はその差がなくなってきてるんですけれどもアメリカはめちゃめちゃ学費が高いんです。それで、「自分は学費をこれだけ払っているんだから、それに見合う教育をしてもらわなくちゃ困る」ということで、昔から学生のアンケートとか授業評価というのをかなりやっていました。教員の授業が良くないと、学部長とかに「あいつは駄目だ」と文句を言いに行くんです。それぐらい学生が必死になっていて、しかも大学院になると学費を自分で稼いだりしていますから、真剣さが全然違うなと。日本だと……最近はどうなんでしょう、「大学に入ったら遊ぶんだ」という世論もありますけれども、アメリカはそうでもない。というふうに感じました。あとは教員の立場から言うと、日本だとここ10年ぐらいはシラバスとかそういうのをしっかり学生に提示しますけども、かつて私が学生だった頃は、ほとんどそういうのはなかったんです。だけど、それもアメリカでは20年ぐらい前からしっかりやっていた。そういう教育に対する考え方というのは、アメリカの方がしっかりしていた印象です。

こどもたちに一言お願いします


葛岡教授: 勉強というととにかく椅子に座って問題集を解くということだけになりがちですが、そうではなくて、好きなものをとにかく突っ込んでやってみるのがいいんだろうなと思います。何か好きなものがあったら、それを一生懸命やってみる。それをやりながら、ちょっと勉強も一緒にやっていく。同時にでなくてもいいですけれども、いくつかの趣味を持ってやっていくと、あとでそれが結び付いたりするので。好きなことをどんどんやりましょう、ということを言いたいと思います。あとは、最近日本では海外にあまり興味がない学生が多いんです。なので世界に目を向けて、自分だったらどこの国に行ってみたいとか、そういういうことをちょっと考えてみてほしいなと思います。



テクテク編集部あとがき

私もオンラインコミュニケーションをする機会が増えていますが、便利である一方ヒトとヒトの繋がりがすこし希薄になったように感じています。そういった現状のなかで、葛岡先生のされている研究によってオンラインでもヒトの繋がりを感じられるようになりオンラインとオフラインの垣根をなくせるようになるのではないかと思いました。 また、優秀な先生・学生は勉強だけではなく好きなことをトコトンしているというお話は、こどもたちの教育を考えるうえで大事なポイントであるとテクテクは考えています。葛岡先生のお話を教訓にして私たちテクテクは子供たちの”好き”や”興味”を起点として伸ばしていける学習の在り方を探求してまいります。

 

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